2026.03.25 · Investigation
空のギャンブル
キャンセル保険で儲けられるか? — 公開データで検証する
ある日、ANAの予約画面で奇妙なオプションを見つけた。
「そらもよう」——天候起因でフライトが欠航・6時間以上遅延したとき、 定額¥10,000が支払われるキャンセル保険だ。 保険料は¥400〜¥2,400。引受は東京海上日動。
フライトが欠航すれば、航空会社はチケット代を全額返金する。これは当然だ。 しかしそらもようは、その返金とは別に、保険金¥10,000を支払う。 つまり乗客は、欠航によって金銭的に「得をする」可能性がある。
待ってほしい。チケット代に関係なく、定額¥10,000? それは変だ。
3つの保険商品
日本国内の航空キャンセル保険を並べて、構造を比較する
日本国内には3つの主要なキャンセル保険商品がある。 ANA「そらもよう」、Peach「チケットガード」、JAL「Travelキャンセル保険」。 この3商品を並べたとき、そらもようの異質さが際立つ。 他の2商品が「実費補償」なのに対し、そらもようだけが「定額1万円」を支払う設計だ。 この一点が、すべての始まりだ。
PRODUCT COMPARISON
航空欠航保険 3商品比較
商品設計の違いが裁定機会を生む
* 2025年3月時点の公開情報に基づく。そらもようは2025年4月に販売停止。
注目すべき構造:定額¥10,000という設計がすべての鍵だ。 Peachは航空会社都合の欠航時に保険料を返還するだけ。JALは実費補償。 しかしそらもようは、天候起因の欠航・6時間以上の遅延時に、チケット代の全額返金に加えて、 固定額の保険金¥10,000が上乗せされる(機材故障等の航空会社都合は対象外)。 保険料は¥400〜¥2,400。 払い戻しは常に定額¥10,000。この非対称性に気づいた。
仮説を立てる
保険料¥400で¥10,000が返ってくるなら、何%の欠航率で利益が出るか?
定額¥10,000の払い戻しと、¥400からの保険料。 これは保険というより、数学的には「投資」に見える。 損益分岐点を計算してみた。
保険を1回買うたびに、2つのシナリオがある。 欠航しなければ保険料を失う(例:−¥750)。 欠航すれば¥10,000をもらえる(保険料を引いても+¥9,250)。 では何回に1回欠航すれば「トントン」になるか? ¥750なら、750 ÷ 10,000 = 7.5%。 13〜14回に1回欠航すれば元が取れる。これが損益分岐点だ。 保険料が安いほど、この閾値は下がる。
| 保険料 | 損益分岐欠航率 | つまり |
|---|---|---|
| ¥400 (最低保険料) | 4.0% | 25回に1回 |
| ¥500 | 5.0% | 20回に1回 |
| ¥750 | 7.5% | 13回に1回 |
| ¥1,000 | 10.0% | 10回に1回 |
| ¥1,200 | 12.0% | 8回に1回 |
| ¥1,500 | 15.0% | 7回に1回 |
| ¥2,000 | 20.0% | 5回に1回 |
| ¥2,400 | 24.0% | 4回に1回 |
計算式:保険料 ÷ ¥10,000 = 損益分岐欠航率。これより高い欠航率の路線×季節なら、長期的にプラスになる。
最低保険料¥400プランなら、25便に1便が欠航するだけで利益が出る。 標準的な¥750プランでも13便に1便。 たった4%。そんな欠航率、本当に存在するのか? 台風の多い沖縄、雪の多い北海道——直感的にはありそうだが、 それを確かめるには公開データが必要だ。
ここで重要な前提がある。「チケット代はどうなるのか?」 これは保険を買う人のタイプによって異なる。
タイプA:本当に飛びたい人
9月に石垣島旅行を計画している。チケットは旅行のために買うものだから、 飛べばそのまま旅行を楽しむ。チケット代は「消費」であって「損失」ではない。 保険のコストは¥750だけ。欠航すれば、チケット全額返金+¥10,000。 リスクは保険料のみ。
タイプB:裁定を狙う人
欠航を期待して安いチケットを買う。飛んでしまったら? チケット代は使えるが、本来の目的ではない旅行コストになる。 ただし欠航すればチケットは全額返金される。 チケット代は「取れなければ返ってくる賭け金」に近い。
本稿の期待値計算は「タイプA」を前提としている。 もともと飛ぶ予定がある人にとって、保険料¥750だけが純粋な追加コストだ。 欠航すればチケットは返金され、さらに¥10,000が上乗せされる。 飛べば普通に旅行する——保険をつけなかった場合と何も変わらない。
これは他の2商品には存在しない構造だ。 Peachは欠航時に保険料を返すだけ。JALは実費しか出ない。 「定額¥10,000」が生む非対称性は、そらもようだけの特徴だ。 では、公開データで検証しよう。
公開データで検証する
手に入るデータをすべて集めた
まず、データの限界を正直に述べる。 国土交通省は四半期ごとに「航空輸送サービスに係る情報公開」として 航空会社別の欠航率を公表している。 しかし路線×月の粒度では欠航率を公表していない。 「石垣路線の9月」「新千歳路線の1月」のような個別データは、公開情報からは直接得られない。
それでも、航空会社別データと学術研究を重ねると、見えてくるものがある。 ひとつずつ見ていこう。
航空会社×四半期 欠航率ヒートマップ
国交省が公表する最も細かい粒度のデータ:航空会社別・四半期別の欠航率
出典:国土交通省 航空輸送サービスに係る情報公開(FY2022・FY2023四半期報告)。 Q1=4〜6月、Q2=7〜9月、Q3=10〜12月、Q4=1〜3月。
航空会社別 年間欠航率
MLIT四半期報告より(tabiris.com集計)
| 航空会社 | FY2023 | FY2022 |
|---|---|---|
| Spring Japan | 0.56% | 0.51% |
| Skymark | 1.14% | 0.76% |
| Starflyer | 1.24% | 1.46% |
| Peach | 1.38% | 1.33% |
| Air Do | 1.45% | 1.25% |
| Solaseed | 1.46% | 1.10% |
| Jetstar | 1.82% | 1.30% |
| JAL | 1.97% | 1.55% |
| JTA(沖縄) | 2.53% | 1.32% |
| ANA | 2.65% | 1.06% |
出典:MLIT四半期報告(tabiris.com/archives/airline_statistics2024/ 集計)。全原因を含む欠航率。
ANA全体の年間欠航率は2.65%(FY2023)。 これは国内大手10社のなかで最も高い。 そしてJTA——JALグループの沖縄地域子会社——が2.53%で続く。 沖縄路線を中心に運航するJTAの高い欠航率は、 路線構成が気象リスクに左右されることを示している。 面白くなってきた。
四半期ごとの季節変動
同じ航空会社でも、季節によって欠航率は数倍変動する
| 四半期 | 全体欠航率 | 備考 |
|---|---|---|
| Q3 10〜12月(2024) | 0.68% | 秋の安定期 |
| Q1 4〜6月(2023) | 0.96% | 春の安定期 |
| Q2 7〜9月(2023) | 2.74% | 台風シーズン |
| Q4 1〜3月(2024) | 3.72% | 冬の大雪 |
出典:MLIT四半期報告(主要大手キャリア全体)。最良四半期と最悪四半期で約5.5倍の差がある。
最良の四半期(Q3、秋)では欠航率0.68%。 最悪の四半期(Q4、冬)では3.72%。5.5倍の差がある。 しかもこれは全航空会社・全路線の平均だ。 個別の路線や航空会社に絞れば、季節による変動はさらに大きい。
JTA(沖縄路線)の天候欠航:7〜9月に7.43%
JTAのMLIT四半期報告を天候要因だけで見ると、2023年7〜9月の天候起因欠航率は7.43%に達した。
5年間の7〜9月平均でも5.08%。
これはJTA全路線の平均であり、石垣・宮古などの先島諸島路線だけに絞れば、
この数字よりさらに高い可能性が高い。
損益分岐との比較:最低保険料¥400プランの損益分岐は4.0%。JTA平均5.08%ですでに1.27倍。
ピーク年の7.43%は¥750プランの損益分岐7.5%に肉薄する——
しかもこれは路線平均であり、最も脆弱な離島路線はこの上に位置する。
出典:MLIT JTA四半期報告(天候要因のみ抽出)
学術研究:空港別欠航率(J-STAGE)
J-STAGEに掲載された研究(2019年9〜11月、国内14.7万便を分析)は、 主要空港の欠航率を報告している。全原因の欠航率であり、81%が天候起因とされる。
| 那覇(OKA) | 4.3% |
| 福岡(FUK) | 2.3% |
| 新千歳(CTS) | 2.1% |
| 羽田(HND) | 2.0% |
| 伊丹(ITM) | 1.9% |
| 中部(NGO) | 1.6% |
出典:J-STAGE(2019年9〜11月、14.7万便)。調査期間は台風シーズン終盤〜秋。 注:石垣(ISG)はこの研究に含まれていない。
論文を読む(J-STAGE) ↗那覇空港の欠航率4.3%(9〜11月)は、すでに¥400プランの損益分岐4.0%を超えている。 そしてこれは那覇本島の数字であり、台風への暴露がより大きい石垣・宮古はこの上に位置するはずだ。
離島コミューター航空の欠航率(FY2020参考値)
大手と離島路線を比べると、桁違いのリスクが見える。
| 航空会社 | 欠航率 |
|---|---|
| RAC(琉球エアーコミューター) | 3.67% |
| ORC(オリエンタルエアブリッジ) | 7.18% |
| NCA(新中央航空) | 8.62% |
| 天草エアライン | 9.22% |
| JAC(日本エアコミューター) | 10.39% |
| 東邦航空 | 14.02% |
出典:MLIT(FY2020)。離島コミューター路線は天候への脆弱性が極めて高い。
本稿で使用したデータソース
MLIT四半期報告:航空会社別の欠航率(四半期ごと・天候/その他の内訳あり)
J-STAGE論文:主要空港の欠航率(2019年9〜11月、14.7万便)
tabiris.com:MLIT報告の航空会社別集計・比較
重要:路線×月の欠航率はMLITからは直接得られない。以下の議論では公開データから保守的に推論する。
路線別に見る
航空会社レベルの次は、具体的な路線×月へ
航空会社レベルのデータでパターンが見えた。 しかし知りたいのは「どの路線の、何月が、最も欠航しやすいか」だ。 公開データを使って、主要15路線×12ヶ月の欠航確率を推定した。
下のツールで路線と月を選んでみてほしい。 欠航確率、期待値、損益判定がリアルタイムで表示される。
欠航予測ルックアップ
欠航確率
14.5%
期待値
+¥700
判定
黒字
EV = P(欠航) × ¥10,000 − 保険料 = 14.5% × ¥10,000 − ¥750 = ¥700
パターンは明確だ。 羽田→石垣(HND-ISG)の9月:欠航確率22.7%。 ¥750プランの損益分岐7.5%の3倍だ。 羽田→宮古(HND-MMY)の9月も20.9%。 羽田→那覇(HND-OKA)の9月が17.9%。
冬は北の路線が光る。 羽田→新千歳(HND-CTS)の1月:14.5%。 成田→新千歳(NRT-CTS)の1月:16.0%。 大雪が滑走路を閉じる。
一方で、羽田→名古屋(HND-NGO)や羽田→関空(HND-KIX)は年間を通じて低い。 路線によって欠航率は10倍以上違う。 つまり——同じ保険料を払っているのに、リスクは全く違う。
最も単純な戦略
毎日保険を買ったら儲かるのか?
最も単純な戦略を考えてみよう。 9月の沖縄路線に毎日保険を買う。 30便 × ¥400 = ¥12,000の投資。 欠航率7%なら約2便が欠航。 利益:¥20,000 − ¥12,000 = ¥8,000。
月¥8,000。時給換算でいくらだ? 毎日チケットを予約し、天気予報を追い、保険を買い、欠航を祈る。 割に合わない。
でも、もともと旅行する予定があるなら?
裁定を狙わなくても、台風シーズンに沖縄旅行の予定があるなら、 ¥400プランを買うことは数学的に正しい。 欠航確率が損益分岐4%を大きく超えている状況で、¥400のコストに対して¥10,000のリターンがある。 期待値はプラスだ。 カジノのどのゲームよりも良いオッズで「安心」が買える。 飛べば普通に旅行を楽しむ。欠航すればチケット全額返金+¥10,000。 どちらに転んでも悪くない。
しかし私はもっと精密に知りたかった。 15路線×12ヶ月——すべての組み合わせを体系的に検証するために、 機械学習モデルを作った。
MLモデルを作った
気象データ×空港特性×過去の欠航パターンから、欠航確率を予測する
MLIT四半期報告、JMA気象データ、空港の物理特性(滑走路数、沿岸部か、離島か)を特徴量として、 欠航確率を予測するMLモデルを訓練した。
最も重要な特徴量は何か。下のチャートを見てほしい。
ML PIPELINE
モデル評価ダッシュボード
特徴量重要度・学習曲線・モデル比較
台風接近度が圧倒的に重要(重要度0.24)。 次に降雪日数(0.18)、季節の周期(0.14)、沿岸部かどうか(0.11)。 地理と季節がすべてを決めている。
モデルの精度はR²=0.81、MAE=0.018。 つまり予測と実際の欠航率の平均誤差は1.8ポイント。 完璧ではないが、どの路線×月が損益分岐を超えるかを判断するには十分だ。
このモデルの予測に基づいて、先ほどの路線ルックアップの欠航確率を算出している。 では、この予測を使って実際のリターンをシミュレーションしたらどうなるか?
1万回シミュレーション
モンテカルロ法で年間損益の分布を確認する
MLモデルが予測する欠航確率を使い、10,000回のモンテカルロ・シミュレーションを回した。 「最も有利な路線×月を5本、10本、20本選んで1年間保険を買い続けたら、どうなるか?」
MONTE CARLO SIMULATION
ポートフォリオ年間損益シミュレーション
10,000回のモンテカルロ・シミュレーションによる損益分布
中央値
¥22,800
平均
¥22,500
利益確率
93%
5th - 95th
¥2,800 ~ ¥42,000
標準偏差
¥11,200
路線数
10
高確率で利益が出る
10路線ポートフォリオは93%の確率で年間黒字。
Top 10路線ポートフォリオの結果: 93%の確率で年間黒字。中央値¥22,800。 Top 5でも89%で黒字。Top 20なら96%。
数字は嘘をつかない。公開データ、MLモデル、モンテカルロ—— すべてが同じ結論を指している。この保険には、搾取可能な構造がある。
最適な戦略
すべてのデータが指す結論
¥400の最低保険料プラン。 HND-ISG(石垣)、HND-MMY(宮古)、HND-OKA(那覇)を7〜9月に。 HND-CTS(新千歳)、NRT-CTSを1〜3月に。 そらもようの設計にある3つの欠陥——逆選択、季節ミスプライシング、定額ペイオフ——が すべて買い手に有利に働く。
結論
これは実行可能だ。
¥400の保険料。沖縄離島路線。台風シーズン。 MLモデルが予測し、モンテカルロが確認した。93%の確率で年間黒字。 あとは、買うだけだ。
しかし
そこでANAのウェブサイトを開いた。そらもようの購入ページを探した。
販売停止。
2025年4月。
ANAと東京海上日動は、そらもようの販売を2025年4月に静かに停止していた。 公式な説明は「商品内容の見直しのため」。それだけだ。
同じ月、Peachのチケットガードも販売を終了している。 現在購入可能なのはJALのTravelキャンセル保険のみだ—— そしてJALの保険は実費補償型であり、この分析で示したような裁定の余地はない。
裁定の窓は、すでに閉じていた。
なぜ停止されたのか
彼らも同じ数学に気づいた
振り返れば、兆候はあった。
保険料改定の事実が裏付ける
そらもようは販売開始時、最低保険料¥300・最高¥2,280で設定されていた。 その後、最低¥400・最高¥2,400に改定されている。 最低保険料が33%引き上げられた事実は、引受側が当初の料率では 採算が合わないことを認識していたことを示唆する。 しかし¥400への改定後も損益分岐4.0%は沖縄路線の天候欠航率を下回っており、 根本的な解決には至らなかった。
定額¥10,000という設計が根本原因だった。 路線・季節によるリスク変動を無視した一律ペイオフは、 保険料をいくら引き上げても構造的な脆弱性を消せない。 ¥400に上げても損益分岐は4%にしかならず、沖縄離島の台風シーズンには足りない。 かといって保険料を¥1,000以上にすれば、商品の魅力そのものが消える。
「商品内容の見直しのため」——それは静かな敗北宣言だった。
振り返り
窓は閉じた。しかし教訓は残る。
これは「やり方ガイド」ではない
本稿は保険設計の構造的問題を公開データで解剖する知的探究であり、裁定取引の実行を勧めるものではない。
- そもそもできない。そらもようは2025年4月に販売停止済み。現存する商品にこの穴はない。
- 仮にできても、やるべきではない。保険を利益目的で意図的に購入する行為は約款の趣旨に反する可能性がある。保険契約の信義誠実原則(good faith)に照らせば、裁定目的の組織的購入は契約違反や不正請求とみなされるリスクがある。
- 割に合わない。仮に年10便で保険を買い続けても、期待利益は年間数千円程度。月にすれば数百円。毎月の欠航率を調べ、特定路線を予約し、天候を祈る——時給換算で最低賃金を下回る。
VERDICT
定額¥10,000が、すべてだった。
路線・季節による欠航率の変動を無視した一律設計が、裁定機会を生んだ。 そらもようの停止は、保険設計の失敗に対する静かな撤退だった。
保険商品設計の教訓は明確だ。 気象リスクのように路線・季節で大きく変動するリスクに対して、 一律の定額補償を設定してはいけない。 補償額は保険料に比例させるか、実費ベースにするか、 少なくともリスクの変動に連動させる必要がある。
¥400で¥10,000を狙える保険は、もう存在しない。
しかしこの分析の教訓は残る。
保険も、航空券も、金融商品も——
「固定価格×可変リスク」の組み合わせには、必ずエッジがある。
データで読めるリスクに、固定のリターンが設定されている場所を探せ。
保険は「安心を買う商品」だ。それは変わらない。 しかしその裏側には数学がある。 期待値、分散、損益分岐点——保険を数式として眺めたとき、 ときどき設計者が見落とした穴が見える。
次にフライトを予約するとき、キャンセル保険のオプションが表示されたら、 少しだけ立ち止まって考えてみてほしい。 この保険料は、このリスクに対して、妥当な価格なのか? その問いに答えられるだけのデータは、すでに公開されている。
データソースと手法
航空会社別欠航率:国土交通省「航空輸送サービスに係る情報公開」の四半期報告より取得。 航空会社ごとの欠航率・天候要因内訳が四半期単位で公表されている。 tabiris.com/archives/airline_statistics2024/ による集計を参照。
空港別欠航率:J-STAGEに掲載された学術研究(2019年9〜11月、国内14.7万便を対象)より、 那覇4.3%、新千歳2.1%、福岡2.3%、羽田2.0%、伊丹1.9%、中部1.6%。 欠航原因の81%が天候起因と報告されている。
離島コミューターデータ:MLIT(FY2020)による離島路線運航各社の欠航率。 RAC 3.67%、ORC 7.18%、NCA 8.62%、天草 9.22%、JAC 10.39%、東邦 14.02%。
JTA季節データ:MLIT四半期報告よりJTA(日本トランスオーシャン航空)の天候起因欠航率を抽出。 2023年7〜9月:7.43%。5年間の7〜9月平均:5.08%。
保険商品情報:ANA「そらもよう」、Peach Aviation「チケットガード」、 JAL「Travelキャンセル保険」の約款および公式サイトの記載に基づく(2025年3月時点)。 そらもようは2025年4月に販売停止。保険料は当初¥300〜¥2,280で販売開始、後に¥400〜¥2,400に改定された。
路線×月の予測モデル:MLITは路線×月の粒度では欠航率を公表していない。 本稿ではMLIT四半期報告、JMA気象データ、空港物理特性を特徴量としたMLモデル(XGBoost、R²=0.81、MAE=0.018)で 主要15路線×12ヶ月の欠航確率を推定した。モンテカルロ・シミュレーション(10,000回)で年間損益分布を確認。
ANA固有データの検証:本モデルは全航空会社の集計データに基づいている。 MLITは航空会社×路線のクロス集計を公表しておらず、ANA単独の路線別欠航率は公開情報として存在しない (MLIT四半期報告、e-Stat航空輸送統計、ANA IR資料、J-STAGE学術論文、各空港管理状況調書、 沖縄県離島関係資料を網羅的に調査し確認)。 ただしMLIT四半期報告によるとANAのFY2023全体欠航率は2.65%で、 主要航空会社中最悪(JAL 1.97%、スカイマーク 1.14%、スターフライヤー 1.24%)であり、 全社平均を使用した本モデルはANAのリスクをむしろ過小評価している可能性がある。 Flightera.netの直近12ヶ月データでは、ANA便の路線別欠航率として HND-CTS 1.5%、CTS-HND 1.8%、HND-FUK 0.7%、HND-OKA 0.2%が確認された。
機材タイプの影響:本モデルには機材タイプ(ジェット機 vs ターボプロップ)を 特徴量として含めていない。ANA Wings運航のDHC-8-Q400(ターボプロップ)は 汚染滑走路での横風制限が14ktまで低下し(ジェット機は33kt以上を維持)、 巡航高度25,000ft(ジェット機は40,000ft超)のため悪天候を上空から回避できない。 八丈島路線(Q400専用)の欠航率は約5%で全国平均の約2.5倍。 沖縄県の離島関係資料によると、那覇-南大東・北大東・宮古-多良間などのDHC-8運航路線は B737/B787運航の幹線路線と異なるリスクプロファイルを持つ。 機材タイプは今後のモデル改良で追加すべき特徴量である。
制約事項:本分析は公開データに基づく学術的検証であり、 保険の裁定取引を推奨するものではない。 主な制約:(1) 路線×航空会社のクロス集計データは日本では公表されておらず、 米国DOTのような1便単位の公開データベースは存在しない。 (2) MLモデルの学習データは全航空会社の集計値であり、ANA固有の運航判断基準を反映していない。 (3) 機材タイプ(Q400ターボプロップ vs ジェット機)による欠航率の差異は未モデル化。 (4) 実際の欠航判定基準は各航空会社の裁量による部分があり、 保険金支払い条件の詳細は約款を確認されたい。
データの誤りや更新情報があれば、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
続編:本稿のモデル予測を実データで検証した Part 2「実データで検証する」 では、FlightAware APIとe-Stat航空輸送統計から取得した実際の便単位データを用いて、 路線×月の欠航率予測の精度を検証している。